歌だけならきれいに聞こえる。伴奏だけでも問題はない。それなのに、二つを同時に鳴らすと強い部分で音が割れる。そんなときは、一つずつの録音だけでなく、重なった後のレベルを見ます。
ここで扱うのは、Audacity内で録音を重ねる段階の確認です。マイクの入力ゲインを決める話や、すでに割れて録音された音を修復する話とは分けます。
個別に余裕があっても、足した結果は変わる
ミックスでは、同じ時刻の波形が加わります。山が重なれば大きくなり、逆向きなら打ち消し合うこともあります。元の音声との関係によって、結果のピークは変わります。(資料1)
公式マニュアルが示す「約6 dB増える」という例は、同じ音を同じ位置にそろえた二つのトラックを足す場合です。どんな歌と伴奏でも必ず6 dB増える、という規則ではありません。耳に感じる音量が必ず二倍になるという意味でもありません。(資料1)
まず、今回渡す組み合わせを再生し、Playback Meterで合計のレベルを確認します。静かな冒頭だけでなく、歌と伴奏が強く重なる場所まで聞いてください。
バランスを変えるのか、全体を下げるのか
伴奏だけが大きすぎるなら、伴奏のGain/Volumeを下げて歌との関係を整えます。すでに両者のバランスがよいなら、片方だけを大きく下げるより、両方を同じdB量だけ下げて比較する考え方があります。(資料1)
本記事では、変更前の各値をメモし、まず小さな変更から試すことを勧めます。曲によって必要な余裕は異なるので、「必ずこの値なら安全」という固定値にはしません。
複数トラックをそれぞれノーマライズすることも、同じ量だけ下げる操作とは別です。今回はトラック間の比率を変えたいのか、混ぜた後のピークを下げたいのかを先に決めましょう。
Mix and Renderでは、ミュートだけに頼らない
「Tracks > Mix > Mix and Render」は、選択したトラックをまとめます。選択されていればミュート中のトラックも含まれ、時間の一部分だけを選んでいてもトラック全体が対象です。(資料2)
試聴で聞こえなかったテイクが、まとめた音には入ってしまうことがあります。使わない録音をMuteにしただけでなく、ミックス対象の選択から外れているかを確認してください。
この説明はMixメニューの操作についてです。書き出しの各モードまで「ミュートが効く」「効かない」の一言でまとめず、使う操作ごとの範囲を確認します。
新しいミックスと元トラックを一緒に鳴らしていないか
「Mix and Render」は元トラックを置き換えます。一方、「Mix and Render to New Track」は、元トラックを残して、まとめた音を別トラックに追加します。(資料2)
後者で音が急に大きくなったら、元の歌・伴奏と、新しく作ったMixを全部同時に鳴らしていないかを見ます。同じ演奏が二重に重なっていれば、完成したミックスだけを評価していることにはなりません。
比較は、「元の組み合わせ」と「新しいMix」を交互に聞く形にします。不要な元データをすぐ削除するのではなく、まず再生対象を分けて原因を確かめましょう。
最後は書き出したファイルで確認する
調整後は、受け渡す音声を書き出して別に再生します。編集画面のメーターだけでなく、強く重なる場所が意図した音になっているかを聞きます。再生機器側の音量を上げすぎて比較しないでください。
元の各録音が単独でもひずんでいるなら、今回の合計レベルの調整だけでは解決しない可能性があります。「元の録音」「重ねた再生」「書き出した結果」のどこから違和感が出るかを分け、相談するときもその順に伝えます。
本記事はAudacity 3.7系の公式マニュアルに基づく確認方法で、読者の録音の原因を診断したものではありません。まず二重再生と対象トラックを確かめ、そのうえで合計のレベルを整えましょう。
参考資料
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Audacity — Mixing Audio Tracks https://manual.audacityteam.org/man/mixing.html
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Audacity — Tracks Menu: Mix https://manual.audacityteam.org/man/tracks_menu_mix.html
確認日:2026-10-12