録音した二つの演奏をノーマライズしたのに、一方だけ大きく聞こえる。同じ数字へそろえたはずなのに、なぜでしょうか。まず、そろえたのが音の最大値なのか、聞こえる大きさの目安なのかを確認します。
「ノーマライズ」という言葉だけで、すべての音量差を自動で直す機能と思い込まないことが大切です。
Normalizeがそろえるのは、選択した音のピーク
AudacityのNormalizeは、選択した音の最大振幅を指定したレベルへ合わせる機能です。一方、Loudness NormalizationはLUFS(聞こえる大きさの目安を表す単位)などを使い、知覚される大きさを基準に調整します。(資料1・2)
例えば、途中で一度だけ大きな音が入る録音と、全体を通して強い音が続く録音を考えてみます。最大の瞬間を同じにしても、それだけで全体の聞こえ方まで等しくなったとは判断できません。
これは違いを考えるための例です。実際の二つの録音では、どの範囲を測って調整したかも確認します。片方は曲全体、片方は短い選択範囲という条件では、同じ比較になりません。
二つの機能は、名前ではなく目的で選ぶ
| そろえたいもの | 確認する機能 |
|---|---|
| 音声のピークを指定値にする | Normalize |
| 聞こえる大きさの基準で調整する | Loudness Normalization |
| 複数トラックを同じ量だけ上下させる | Amplifyの適用範囲と設定 |
AudacityのAmplifyは、複数のトラックへ同じ増幅量を適用できると説明されています。Normalizeではトラックごとのピークをそろえるため、各トラックに加わる変化量が同じとは限りません。(資料3)
歌と伴奏のバランスをすでに作っている場合は、両方を選んで個別にピークをそろえる前に、どんな結果を望んでいるかを確かめます。「全部選択して正規化」で、今のバランスまで必ず保持できるとは考えないでください。
ステレオの左右を別々にそろえる設定にも注意
Normalizeには、ステレオの左右を別々にノーマライズする選択肢があります。オフなら同じトラックの左右に同じ量を適用し、オンなら左右を個別に扱います。(資料1)
左右の差がもともとの演奏や配置によるものなら、独立処理でその関係が変わる可能性があります。片側が小さいという理由だけでチェックを入れず、残したいバランスかを先に聞いて判断しましょう。
LUFSの目標値も、どの用途でも共通ではない
Loudness Normalizationには目標値の指定があり、適した基準は用途によって違うとマニュアルは説明しています。(資料2)画面の初期値を、すべての提出先や公開先の推奨値として扱う必要はありません。
先生へ練習音源を渡すなら、指定があるかを先に聞きます。元の演奏の強弱を見てもらいたいのか、聞きやすい大きさへ調整したものを渡すのかも相談してください。
また、モノラル音声のLUFS処理には「Treat mono as dual-mono」という選択肢があります。(資料2)別の計測結果と違った場合は、数字だけを追い込まず、測定する範囲やこの条件が同じかを確認します。
元音源と、書き出した結果を残して比べる
本記事では、元の録音とは別の作業用コピーで調整し、使った機能と対象範囲をメモすることを提案します。音量が上がったことを、雑音や録音済みのひずみまで修復できた証拠にはしません。
比較では機器の再生音量を固定し、短い箇所だけでなく全体の聞きやすさも確かめます。最後に書き出した音声そのものを再生し、意図した歌と伴奏の関係が残っているかを聞いてください。
そろえる基準を決めてから機能を選ぶ。この順序にすれば、「同じ数字なのに違って聞こえる」という疑問を、設定と音の両方から確かめられます。
参考資料
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Audacity — Normalize https://manual.audacityteam.org/man/normalize.html
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Audacity — Loudness Normalization https://manual.audacityteam.org/man/loudness_normalization.html
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Audacity — Amplify and Normalize https://manual.audacityteam.org/man/amplify_and_normalize.html
確認日:2026-10-11