Audacityのスペクトルの山は何を表す?音程を読む前に選択範囲を確認

録音した音をPlot Spectrumで見ると、いくつも山が並びます。一番高い山の数字を見れば、自分が出した音程まで分かるのでしょうか。グラフを判断に使う前に、何の音を、どの範囲で集計したのかを確かめます。

ここで扱うのは、Audacity 3.7系の公式マニュアルにあるスペクトル表示です。楽器の調律手順や、歌の採点ではなく、分析画面を読み違えないための確認です。

横軸は周波数、縦軸はその成分の大きさ

音声の区間を選び、「Analyze > Plot Spectrum」を開きます。標準のSpectrumでは、横軸が周波数のHz、縦軸が振幅のdBです。録音を周波数ごとの成分に分けて表示します。(資料1)

時間に沿った波形表示とは違い、横へ進むほど演奏が先へ進むグラフではありません。また、縦軸の数値を、そのまま部屋で鳴った音の騒音計の値として読むこともできません。マニュアルでは、0 dBの純音がおおむね0 dBに表示されるような基準が説明されています。(資料1)

「高い山がある」ことから、まず言えるのは、その集計条件で目立つ周波数成分があることです。演奏の良し悪しまで数字だけで決める必要はありません。

曲全体を選ぶと、別々の時刻の音も混ざる

Plot Spectrumは、選択音声を一定のサンプル数の区切りで分析し、その結果を平均します。(資料1)一曲分を選んだグラフなら、歌い始めとサビを時刻ごとに区別して見ているわけではありません。

一つの伸ばした音を確かめたいなら、その音が安定している短い区間を選びます。次の音や伴奏まで含んでいれば、目立つ成分がどこから来たかを切り分けにくくなります。選択を変えた後はReplotで更新できます。(資料1)

私は、最初から山を説明し切ろうとするより、同じ録音で区間を変えて見比べる方法が分かりやすいと考えます。選んだ場所を変えると何が残り、何が消えるかが、聞き直す手掛かりになります。

一番高い山と、音の基準になる周波数を同一視しない

楽器の音には、基になる周波数の整数倍にあたる倍音もあります。マニュアルは、直線の周波数軸が高い倍音の観察に役立つと説明しています。(資料1)

例えば、ある音とその倍音に複数の山があるとき、どの山が一番大きいかと、基になる周波数はどれかは、別の問いです。「最大の山が示す音名を、そのまま弾いた音名とする」という判断は避けます。

まず単独の音を聞き、伴奏や別の楽器が入っていない区間を選び直してください。目的が調律なら、スペクトルの山を追い込むより、楽器に合う調律方法へ戻るほうが判断しやすい場面もあります。

Sizeを大きくすれば、何でも正確になるわけではない

Sizeを大きくすると、周波数をより細かく分けられます。その一方、計算に使うサンプル数が増え、より長い時間をまとめて見ることになります。選択区間が設定に対して短すぎる場合は警告が出ます。(資料1)

周波数の近い二つの成分を見たいのか、短い音の変化を知りたいのかで、必要な見方は違います。警告を消すためだけに隣の音まで範囲を広げると、別の内容を測ることになります。

比較するときは、Sizeだけでなく、窓関数のFunctionや軸の設定もそろえます。ここでは普遍的な最適値を置かず、同じ条件で比較できることを優先します。

二つのチャンネルを選んだ結果は、一つと同じではない

分析では、選択されたチャンネルの音が合算されます。公式マニュアルは、同一音声の二つのチャンネルを選ぶと、一つだけの場合より同じピークが6 dB高くなる例を示しています。(資料1)

したがって、昨日のモノラル録音と今日のステレオ録音を、何も確かめずに山の高さだけで比べることはできません。どのトラックとチャンネルを選んだかも、比較条件に含めます。

音声の区間、選択対象、Sizeと表示設定をメモし、元の録音を聞きながらグラフを補助に使いましょう。山の数字を正解にするより、「同じ条件で何が違うか」を確かめる画面として使うほうが、次の練習につながります。

参考資料

  1. Audacity — Plot Spectrum https://manual.audacityteam.org/man/plot_spectrum.html

確認日:2026-10-12