歌やナレーションを録っていて間違えたとき、少し戻って、その先を続けて録り直したい。AudacityにはPunch and Roll Recordという機能があります。ただし、「短い一部分だけを差し替えて、その後のよい録音を自動で残す」操作とは違います。
後ろに残したい演奏があるかを、最初に確認してください。使いどころを取り違えると、直したかった場所以降まで置き換えてしまいます。
選択範囲の終わりでは、自動で録音が止まらない
Audacity 3.7系の公式マニュアルでは、Punch and Rollはつなぎ目以降の録音を取り除き、前の音を聞いた後、その位置から録音を続ける機能です。停止操作をするまで録り直しは続きます。(資料1)
時間の範囲を選んでいても、つなぎ目になるのは左端です。選択範囲だけでなく、その後ろの音も取り除かれます。(資料1)
例えば、曲の途中を二秒だけ選んだからといって、その二秒だけが差し替わるわけではありません。後半のよいテイクを残したいなら、この操作をそのまま使わず、別トラックへの録音や別の編集方法を検討します。
本番の前に、遅延補正を確認する
公式マニュアルは、再生と録音を同期させるため、使用する録音機器に合わせたLatency correctionの調整を前提条件にしています。また、ヘッドホンの使用を推奨しています。(資料1)
つなぎ目でずれたり、再生音の一部が混じったりする問題を、歌い始めるタイミングだけで直そうとしないでください。補正を未確認なら、重要な録音ではなく、短いテスト用のプロジェクトで録音位置を確認します。
他のトラックを聞きながら録るかどうかは、録音設定のOverdubにも関係します。(資料1・2)歌だけを録り直す場合でも、伴奏がどう再生されるかを先に確かめておきましょう。
プリロールは、録音開始前に聞く時間
Pre-rollは、つなぎ目より前の既存音声を何秒再生するかという設定です。Crossfadeは、つなぎ目を滑らかにする長さで、単位はミリ秒です。マニュアルでは初期値をそれぞれ五秒、十ミリ秒と説明しています。(資料1・2)
この二つを同じ待ち時間として扱わないようにします。プリロールを長くしても、それだけで遅延補正ができるわけではありません。
本記事では、前のフレーズを聞いて自然に続けられる場所を選ぶことを勧めます。五秒はすべての曲に最適な長さという意味ではなく、手元の設定が変更されている場合もあります。
間違いより前の、録音済みクリップ内を選ぶ
通常の録音を止め、間違った場所より少し前のつなぎ目を決めます。指定位置は録音済みのクリップ内に置き、「Transport > Recording > Punch and Roll Record」を実行します。(資料1)
既存の音がプリロールとして再生され、つなぎ目へ来ると録音に切り替わります。終わったら自分で停止します。(資料1)
最初は短い試し録りで、どの位置から変わったかを確認してください。「どこから先を録り直すか」を説明できる状態にしてから、長い演奏へ使うほうが取り違えを防げます。
録り直しの境目も、前後から聞く
つなぎ目にはクロスフェードが入り、元の音のごく短い部分と新しい音が混ざります。また、後で確認できるよう、クリップの境界が残ります。(資料1)
したがって、「元の悪いテイクは一切残らない」と考えず、境目の前後を聞きます。言葉の頭が欠けていないか、音が二重になっていないか、伴奏と合っているかを確認しましょう。
結果が気に入らなければ、停止後にUndoで、Punch and Rollを始める直前の状態へ戻せると案内されています。(資料1)ただし、Undoだけを長期のバックアップにせず、重要な元録音は別に保存しておきます。
この機能が向くのは、つなぎ目から先を録り直して続けたい場面です。複数テイクを全部残して後で選ぶ目的とは分け、必要な演奏を失わない使い方を選びましょう。
参考資料
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Audacity — Punch and Roll Record https://manual.audacityteam.org/man/punch_and_roll_record.html
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Audacity — Recording Preferences https://manual.audacityteam.org/man/recording_preferences.html
確認日:2026-10-12