「いち、に、さん、し」と数えてから弾いたのに、先生の伴奏と出だしが合わない。楽譜の最初の音を、必ず1拍目だと思っていないでしょうか。
曲によっては、最初の完全な小節へ入る前に、短い音のまとまりがあります。これを弱起、アウフタクト、ピックアップなどと呼びます。まず楽譜の最初の小節線までに、どれだけの長さがあるかを確認します。
拍子より短い出だしは、書き忘れとは限らない
Doricoの公式解説は、ピックアップを最初の完全な小節より前に置かれた音として説明しています。数拍程度の短いまとまりで、続く部分へ導く役割があるとされています。(資料1)
例えば4/4拍子なのに、最初の小節線まで四分音符が一つしかない場合があります。それだけで「残り三拍の休符が抜けている」と判断せず、弱起として書かれたものかを見ます。
もちろん、途中から切り抜かれた楽譜や、不完全な写しである可能性まで否定するわけではありません。拍子、冒頭の音符と休符、次の小節を一緒に見られる資料を使ってください。
一拍分の弱起なら「4」から入り、次が「1」
ここでは、4/4拍子で四分音符を一拍と数え、弱起が四分音符一つ分だけ、という自作例で考えます。一小節の後ろの一拍を出だしにするので、最初の音を「4」、次の完全な小節を「1」と数えます。
| 位置 | 数え方 | この例で行うこと |
|---|---|---|
| 出だしの前 | 1・2・3 | 拍を共有する |
| 弱起の一音 | 4 | 最初の音を弾く |
| 次の完全な小節 | 1・2・3・4 | 完全な小節の演奏へ続ける |
「1・2・3・4」と言い終わった次に最初の音を弾くと、この例では本来の「1」の位置に弱起を置くことになります。カウントの言葉が同じでも、どの数字で音を出す約束なのかが重要です。
この表はすべての弱起を「4」で始める規則ではありません。二拍分の弱起なら同じ4/4でも「3・4」、八分音符一つ分なら、さらに細かい拍の位置を確認します。
小節番号と、音を出す拍を分ける
Doricoは、弱起を通常の小節数に含めず、最初の完全な小節から番号を数える扱いを説明しています。(資料1)ただし、手元の教材や編集された楽譜の番号も、必ず同じとは決め付けません。
先生から「1小節目から」と言われたときは、弱起の音も含むのか、次の完全な小節からなのかを一度確認しましょう。番号だけでなく、入りの音や練習番号を示す方法があります。
「楽譜の最初」「1小節目」「1拍目」は、同じ場所を指すとは限りません。この三つを区別するだけでも、途中から練習を再開するときの行き違いを減らせます。
伴奏の前奏と、弱起を混同しない
録音された伴奏には、カウントや前奏が付いている場合があります。それが何小節あり、自分の弱起をどこへ重ねるかは、使う音源ごとに確認する部分です。弱起があることから、音源の最初の音に自分も入るとは決まりません。
最初は全曲を流さず、入りの直前から、次の完全な小節までを繰り返します。楽器を持つ前に、拍を数えながら入りの音だけ声で示す方法もあります。先生と同じ位置へ入れたら、実際の演奏に戻します。
曲の最後についても、出だしと合わせて一小節になるはずだと、勝手に音や休符を削らないでください。終わり方は実際の楽譜を優先します。
「何拍数えるか」より「何拍目で入るか」を共有する
相談では「この曲は四分音符一つの弱起なので、先生が1・2・3と数えた後の4で入りますか」と伝えます。開始の位置を合わせてからテンポを変えるほうが、入りのずれを速さの問題と取り違えずに済みます。
参考資料
- Steinberg — Dorico Pro 6.1: Pick-up bars https://www.steinberg.help/r/dorico-pro/6.1/en/dorico/topics/notation_reference/notation_reference_time_signatures/notation_reference_time_signatures_pick_up_bars_c.html?contentId=yJhq286tuScG_RHiit~4Ag 確認日:2026-10-09