曲の終わりにrit.があったので、小さく消えるように弾いた。すると先生から「音量ではなく、速さを変えて」と言われた。rit.とdim.は同じ場所に出てくることもありますが、指示する対象は同じではありません。
まず、rit.はだんだん遅く、dim.はだんだん弱くと分けます。両方書かれているときは、両方を意識する必要があります。
速さの指示と、強弱の指示を読み分ける
Musiccaの音楽辞典は、ritardandoを徐々に遅くする意味とし、略記としてrit.を挙げています。diminuendoは徐々に弱くする意味で、dim.と略されます。(資料1・2)
| 表示 | 基本的に変える対象 | 読み違えやすいこと |
|---|---|---|
| rit. | 進む速さ | 小さく弾くだけで済ませる |
| dim. | 音の強さ | 弱くするたびに速さも落とす |
| rit.とdim.の併記 | 速さと強さの両方 | どちらか一方を忘れる |
同辞典には、だんだん弱く、かつ遅くする組み合わせと、弱くしても遅くしない組み合わせが別に載っています。(資料1・2)「曲が終わりそうだから、二つはいつもセット」と決めないことが大切です。
rit.は、どこから遅くするかも見る
rit.を見つけたら、始まる場所を確かめます。さらに、その後にテンポを示す文字や数字、a tempoなどがあるかを見ます。書かれている区間を読まず、段全体を最初から遅くすると、意図した変化にならない場合があります。
例えば、同じ長さの音が四つある短い練習で、後半からrit.を始めると決めたとします。最初からすべて遅く弾くことと、途中から少しずつ進み方を変えることは別です。どこが変化の出発点なのかを、自分で再現できるようにします。
この四音は確認用の自作例で、すべての曲のrit.を同じ割合で遅くする提案ではありません。「毎拍いくつずつテンポを下げる」という万能の計算表ではなく、実際のフレーズを聞いて調整する練習です。
dim.だけの練習では、拍を保ってみる
dim.の意味を確かめたいなら、同じ短いフレーズを一定の拍で弾き、音を徐々に弱くしてみます。音量の変化と同時に、音と音の間が広がっていないかを聞きます。
一方、rit.の練習では、まず強弱を大きく変えずに速度の変化へ集中します。それぞれを試した後、両方の指示を組み合わせると、自分が何を変えているかが分かりやすくなります。
| 練習用の条件 | 今回聞くこと |
|---|---|
| 速さを保ってdim. | だんだん弱くできたか |
| 強弱を大きく変えずrit. | だんだん遅くできたか |
| 二つを組み合わせる | 片方だけの変化になっていないか |
これは意味を切り分けるための方法です。実際の作品に書かれた表情や、講師から指定された演奏を、この表で上書きするものではありません。
a tempoは、何を「元へ」戻すのか
Musiccaはa tempoを、一時的に変えたテンポを、その前のテンポへ戻す指示と説明しています。(資料3)音量や音の高さを一括で元へ戻す記号ではありません。
例えば、曲の冒頭が四分音符=60、途中で四分音符=84となり、その区間にrit.、続いてa tempoがあるとします。ほかに指示のないこの自作例なら、戻り先として確かめるのはrit.前の84であり、曲の冒頭の60へ機械的に戻すのではありません。
同時にpが書かれていれば、テンポを戻しても、そのpをなかったことにはしません。「元の速さ」と「その時点の強弱」を別々に読むと、戻り際の急な強打なども見直せます。
伴奏と合わせるなら、戻り口まで一緒に練習する
二人で合わせる場合は、遅くなったところだけでなく、a tempoの少し先まで試します。どの合図で元の流れに戻るかがそろっていないと、rit.自体は合っていても、次のフレーズでずれてしまいます。
先生への相談は「もっと雰囲気を付けたい」だけでなく、「ここは音量を下げずに遅くしますか」「a tempoで戻すのは直前のテンポですか」と分けられます。記号を見たら、速度と強弱のどちらに対する指示なのかを、先に言葉にしてみましょう。
参考資料
-
Musicca — ritardando https://www.musicca.com/dictionary/italian/ritardando
-
Musicca — diminuendo https://www.musicca.com/dictionary/italian/diminuendo
-
Musicca — a tempo https://www.musicca.com/dictionary/italian/a-tempo
確認日:2026-10-10